ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

㉗錯迷 堂場瞬一

▶あらすじ 神奈川県捜査一課生え抜きエリートの萩原哲郎に突然の異動命令が下された。赴任先は重大事件が希な湘南・鎌倉南署。しかも署長職。実はこの異例人事には密命があった。それは女性前任者の不審死の謎を署長として潜入捜査せよというもの。協力者も…

㉖郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェイムズ・M・ケイン

▶あらすじ 街道沿いのレストランで働き始めた俺は、ギリシャ人店主の美しい妻コーラにすっかり心を奪われてしまった。やがて、いい仲になった彼女と共謀して店主殺害を計画するが・・・。緻密な小説構成の中に、非常な運命に搦めとられる男女の心情を描きこ…

㉕甲賀忍法帖 山田風太郎

▶あらすじ 400年来の宿敵として対立してきた甲賀・伊賀の忍法二族。彼らは服部半蔵の約定によって、きわどい均衡を保っていた。だが慶長19年、家康によってついにその手綱が解かれる。三代将軍の選定をめぐる徳川家の紛争を、両里から選ばれた精鋭各10…

㉔ジヴェルニーの食卓 原田マハ

▶あらすじ ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシェがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が移っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め…

㉓だれもがポオを愛していた 平石貴樹

▶あらすじ エドガー・アラン・ポオ終焉の地、米国ボルティモアの郊外で日系人兄妹が住む館が爆破され、泥沼に潰えた。テレビ局にかかった予告電話の通り「アッシャー家の崩壊」さながらに始まった事件は、ほどなく「べレニス」、「黒猫」の見立てに発展、捜…

㉒ラスプーチンが来た 山田風太郎

▶あらすじ 日露戦争中、ロシアの内乱を企て日本を勝利に導いた男、怪男児明石元二郎の若き日の物語。明治23年、ひそかに来日し暗躍していた怪僧ラスプーチン。彼はロシア皇太子襲撃を画策していた!?チェーホフ、二葉亭四迷、乃木希典、森鴎外までをも巻…

㉑たゆたえども沈まず 原田マハ

▶あらすじ 19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいった。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家のゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが"世界を変える…

⑳依頼人は死んだ 若竹七海

▶あらすじ 念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。検診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持ち込まれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。…

⑲荊の城 サラ・ウォーターズ

▶あらすじ スウが侍女として入ったのは、俗世間とは隔絶した辺鄙な地に立つ城館。そこに住むのは、スウが世話をする令嬢、モード。それに、彼女の伯父と使用人たち。訪ねてくる者と言えば、伯父の年老いた友人たちだけという屋敷で、同い年のスウとモードが…

⑱蒼海館の殺人 阿津川辰海

▶あらすじ 学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、激しい雨が降り続くなか連続殺人の幕が上がる。刻々とせまる洪水、増える…

⑰見えないグリーン ジョン・スラデック

▶あらすじ ミステリ好きの集まり<素人探偵会>が35年ぶりに再会を期した途端、メンバーのひとりである老人が不審な死を遂げた。現場はトイレという密室―名探偵サッカレイ・フィンの推理を嘲笑うかのように、姿なき殺人鬼がメンバーたちを次々と襲う。あらゆ…

⑯出雲伝説7/8の殺人 島田荘司

▶あらすじ 山陰地方を走る六つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。操作の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい・・・。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶…

⑮狩人の悪夢 有栖川有栖

▶あらすじ 人気ホラー小説家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。そこには「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。しかし有栖が部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタントがかつて住ん…

⑭UFO大通り 島田荘司

▶あらすじ 鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理とはい…

⑬偽のデュー警部 ピーター・ラヴセイ

▶あらすじ 花屋の店員の恋の相手は歯科医だった。歯科医の妻は女優で、彼女は喜劇王チャップリンを頼ってアメリカに渡ると言い出した。二人の恋を実らせるには、この妻を豪華客船上から海へ突き落すことだ。偽名を使い、完全犯罪を胸に乗船した二人だったが…

⑫魔神の遊戯 島田荘司

▶あらすじ ネス湖畔の寒村ティモシーで、突如として発生した凄惨な連続バラバラ殺人。空にオーロラが踊り、魔神の咆哮が大地を揺るがすなか、ひきちぎられた人体の一部が、ひとつ、またひとつと発見される。犯人は旧約聖書に描かれた殺戮の魔神なのか?名探…

⑪孤島の来訪者 方丈貴恵

*ネタバレです。 「時空旅行者の砂時計」の続編で、今回は加茂が救った竜泉一族の子孫が主人公。 前回はタイムトラベル×ミステリということで、まだ馴染みのある組み合わせだったが、今回の特殊設定はかなり攻めている。 喰らった生き物に擬態する能力を持…

⑩ジョン・ブラウンの死体 E・C・R・ロラック

*ネタバレです。 全く前知識を持たずに読んだけれど、これはおすすめ! 社会的地位が低く忌み嫌われる浮浪者のありえない証言を調査し、隠された殺人を暴くという設定が何だか好きだ。 ブラウンが遭遇した死体遺棄事件と、人気作家の剽窃疑惑事件がきれいに…

⑨時空旅行者の砂時計 方丈貴恵

*ネタバレです。 タイムトラベル×ミステリの特殊設定でありながら、呪われた一族、孤立した館、密室、見立殺人とミステリ好きにはたまらないガジェットがふんだんに盛り込まれている。 こういうベタな設定大好き!! 変化球もいいけれど、これぞミステリの…

⑧ベーシックインカム 井上真偽

*ネタバレです。 作者の井上真偽と言えば、「その可能性はすでに考えた」で新たな世界を見せてくれた次世代ミステリの作家さん。 ベーシックインカムは、経済本のようなタイトルだが、テクノロジーの発達した未来を舞台にしたSFミステリ短編集。そのせいか…

⑦天使の殺人 辻真先

*ネタバレを含みます。 作者の辻真先さんは、「たかが殺人じゃないか」で2021年度このミス1位をとっている。なんと御年88歳だとか。恐れ入りながら著作を知らなかったので、調べてみたところ、別名義=牧薩次(辻真先のアナグラムだ!)で「完全恋愛…

⑥人間の顔は食べづらい 白井智之

*ネタバレを含みます。 食用クローン人間が売買される時代のSFミステリ。 新型コロナウイルスが流行り、家畜の感染により肉食をやめた人間たち。その結果、子どもの危機的な栄養不足という社会問題が起こり、その解決策として可決された法案が食人法である…

⑤Another 綾辻行人

*ネタバレを含みます。 Anotherを初めて読んだのは、ちょうど10年くらい前だ。 当時、漫画化・アニメ化と世間はAnotherフィーバーだったのを覚えている。館シリーズで新本格の入り口に立ったばかりのわたしは、Anotherこそが綾辻さ…

④ラグナロク洞 霧舎巧

*ネタバレを含みます。 お気に入りの<あかずの扉>研究会シリーズ3作目。 このシリーズは、鳴海さんと後動さんと2人の探偵が出てくるが、私は鳴海さん推しだ。 作中でカケルが「今の鳴海さんの推理は―(省略)―決して瑕疵のない唯一無二の回答というわけ…

③キングを探せ 法月綸太郎

*ネタバレを含みます。 タイトルが秀逸である。この作品はタイトル自体にトラップが仕掛けられているのだ。 最初に犯人視点で計画のあらましを描くことで、読者はある程度の真相をあらかじめ知ることになる。しかし、りさぴょんとカネゴンの対象(殺してほ…

②あいにくの雨で 麻耶雄嵩

*ネタバレを含みます。 解説で千街さんが書かれているように、麻耶雄嵩は破壊者だ。「翼ある闇」や「夏と冬の奏鳴曲」でこてんぱんにされた読者は分かると思う(笑) 千街さん曰く、ミステリというのは事件の解決とともに救済がもたらされ、非日常から日常に…

①ナイン・テイラーズ ドロシー・L・セイヤーズ

*ネタバレを含みます。 2021年の初読みはナイン・テイラーズ。 意図せず大晦日から読み始めたけれど、この作品を読むには、365日中一番ふさわしい日だった。 この作品の主人公である鐘については、説明があるものの縁がなさすぎて、仕組みや歴史などい…

6月の一口忘備録☔️

※ネタバレを含みます。①天使の囀り 貴志祐介 心底気持ち悪かった。アマゾンの奥地に発生していた未知の寄生虫に調査隊の1人が感染してしまう。寄生されると人はそれぞれが忌避するものに対する恐怖や危機感を失い命を落とす。 寄生虫の描写の気持ち悪さと言…

【幽霊の2/3】ヘレン・マクロイ

*ネタバレを含みます。 マクロイの傑作の1つと言われている本作。 マクロイを語れるほど読んでおらず、またマクロイの魅力を十分とらえられていないので、いまいちどのあたりが傑作なのか分からなかった。(ごめんなさい) この時代にこういう作品がでた…

【名探偵の証明】市川哲也

*ネタバレを含みます このミステリにおいては事件はもはや脇役だ。名探偵の栄光と没落の物語である。 かつては一世を風靡した名探偵・屋敷啓次郎は、今では世間に忘れられ家賃も払えない哀れな姿に。 歳をとるにつれて推理力が鈍っていく恐怖や、名探偵ゆえ…