㉔ジヴェルニーの食卓 原田マハ
▶あらすじ
ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシェがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が移っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。
▶ネタバレ感想
芸術にわかは原田マハ作品を読むべし!
美術館に行くのが好き。作品を語れるほどの知識はないが、有名な画家や作品は分かる。全作品を網羅しているわけではないが、好きな画風の画家がいる・・・。
こういう方に原田さんの作品を勧めたい。
わたし自身も、絵の価値や歴史は分からないが、何となく絵を見るのが好きというタイプ。原田さんの作品を読めば、これまでぼんやり見てきた絵たちに秘められたドラマを知ることができるので、ますます絵に興味がわきますよ。スマホを傍において読むのを勧めます。作中にでてきた絵をすぐ検索できるように(笑)
物語の主人公は、日陰で誕生した印象派の絵たち
本作は、印象派の代表画家たち、マティス、ドガ、セザンヌ、モネらを取り上げた短編集。どの話も、彼らをそばで支えた人たちが語り手となっている。マティスの屋敷で使用人として奉公するマリア、友人のドガに対し憧れと恐れを抱くメアリー・カサット、セザンヌの可能性を誰よりも信じ支援したタンギー爺さん、義理父のモネのためにその食卓を母の遺したレシピで彩ったブランシェ。
画家を献身的に支える彼らだが、その眼は画家ではなく、作品に魅せられているように感じた。
その証拠に、物語の中で彼らが最初に出会うのは絵だ。ファーストコンタクトの状況はそれぞれだが、彼らの目を通して描かれる絵は、みんな光に満ちている。それは新しい光であり、経験したことのない光。
彼らは、その絵を生み出した画家本人と同じくらい、作品の可能性を信じ愛おしんだ人たちなのだ。
マリアは生涯をロザリオ礼拝堂に捧げたし、タンギー爺さんはセザンヌのりんごが世界を変えると最後まで疑わなかった。
画家たちからしてみれば、印象派に厳しい風が吹く時代の中で、自分をかばうのではなく、自分の描いた絵を一緒になって守ってくれる人がいて心強かっただろうな。