ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

㉗錯迷 堂場瞬一

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▶あらすじ

神奈川県捜査一課生え抜きエリートの萩原哲郎に突然の異動命令が下された。赴任先は重大事件が希な湘南・鎌倉南署。しかも署長職。実はこの異例人事には密命があった。それは女性前任者の不審死の謎を署長として潜入捜査せよというもの。協力者もなく孤立無援の中、萩原は秘密裏に捜査を始めるが署員たちの口は固く容易に進まない。そんな時、管内で殺人事件が発生。それは過去の未解決殺人事件と繋がっていた・・・。正義を貫くべき警察官たちが頑なに隠蔽していた真実とは一体何なのか。組織トップの孤独と葛藤、渦巻く人間模様を描く堂場瞬一警察小説の到達点。

 

▶ネタバレ感想

女性署長の不審死という謎に、怪しい動きをする鎌倉南署と、導入の不穏感はよかった。しかし、どうも全体的に不要な描写が多い気がしてしまった・・・。例えば夏美の存在だが、序盤で思わせぶりに接触してくるも、結局最後の最後まで内容は言わないとくる。しかも、ほかの署員の自白ですべてが明らかになった後だから、彼女が真相を暴露したわけではない。夏美の存在意義があまり分からなかった。

また、萩原署長たちは鎌倉南署が何かを隠蔽していることや、それに過去の殺人事件が関係あるようだということまではたどり着いたが、真相解明の大きなキーとなったのは署員の自白というのが少しもやもやした。

萩原署長は、上層部から評価され期待されているのだが、最後まで彼のすごさが分からなかった。また、彼自身は現場経験が少ないことにコンプレックスを持っているが、物語を通してそのコンプレックスを克服できたのかというと、それもあまり感じられなかった。

 

ただ、立て続けに起こった2つの殺人事件と、鎌倉南署の唯一の未解決事件が一つの線で結ばれ、最終的に桜庭署長の不審死の謎へとが繋がるのはおもしろかった。