ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

⑭UFO大通り 島田荘司

▶あらすじ

鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理とはいかに!?「遠隔推理」が冴える、中編「傘を折る女」も収録。

 

 

 

▶ネタバレ感想

御手洗シリーズは事件が騙し絵になっている!

これはめちゃくちゃ個人的な感想なんだけど、御手洗シリーズって、事件が騙し絵みたいなんだよな。

普通の人間の犯行なんだけど、様々な要因で人間技とは思えない不思議な力が働いているように見える。

騙し絵をすぐに見抜ける人って、直観力洞察力に優れているらしいので、数えきれないほどの騙し絵を解いてきた御手洗さんは、あらゆる探偵たちの中でも特にこの2つの能力が高いと思う。

 

この作品は、表題作と「傘を折る女」の中編が2本入ってて、どちらも御手洗シリーズの魅力が詰め込まれているから、初めての人に勧めるのにちょうど良い1冊です!

 

 

おばあちゃんが目撃した宇宙戦争の正体「UFO大通り」

蜂の駆除って確かに宇宙服みたいなの着るもんなあ!(感心)

アナフィラキシーショックって聞いたことはあるけど、蜂刺されが代表的なケースっていうのは知らなかった。

うまいと思ったのは、小寺さんの死の真相だけで終わってもよかったのに、その後第2の事件が起きて、蜂の駆除とうまく繋がっていくところ。

 

また暴力団のような猪神刑事もいい味だしてる。(現実では絶対会いたくないけれど)権力主義の老害代表のような彼が御手洗さんに振り回されるのが見ていて楽しい。

 

 

安楽椅子ものとして秀逸な「傘を折る女」

大雨の日、持っていた傘を車に踏ませて折るという謎の行動をとる女―

安楽椅子探偵ものといえば、ぱっと頭に浮かぶのはハリイ・ケメルマンの代表作「九マイルは遠すぎる」。こちらが耳にした会話だけをもとに謎解きをするのに対し、「傘を折る女」はある目撃証言だけで、殺人事件の真相を暴く。

 

私は安楽椅子ものはいまいち現実味がなくて好きじゃないんだけど、この作品は納得がいった。途中で答え合わせ的に犯人視点の話が差し込まれたからというのもあるだろうけど。でも逆に犯人視点が差し込まれていることで、死体が2体出てきたときの驚きは増すよね。

そんな馬鹿な感は多少あるけど、 安楽椅子ものとしてもサスペンスとしても楽しめる良作です。

 

 

御手洗さんと石岡くんの平穏な日常。

今後の彼らの未来を知っている者からすれば、エモくて仕方がない。

二人でテレビを見たり、つまらない冗談を言い合ったり、お散歩したり(老夫婦か)、石岡君曰く、このころが最も楽しかった時代だとか。

 

最近、御手洗さんが日本を去ってからの話ばかり読んでいたので石岡君との掛け合いが懐かしかったなあ。世界で活躍する御手洗さんは、大体物語の最後のほうにちょこっと登場して事件を解決してしまうので忘れかけていたけど、ほんとにこの人推理の過程を教えてくれないよね(笑)

急に突拍子もないことを言い出すから、石岡君が毎回御手洗さんの頭を心配しなくちゃならない気持ちが分かる。

早く2人が再会して、またお散歩する姿をみたいなあ。