ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

⑨時空旅行者の砂時計 方丈貴恵

*ネタバレです。 タイムトラベル×ミステリの特殊設定でありながら、呪われた一族、孤立した館、密室、見立殺人とミステリ好きにはたまらないガジェットがふんだんに盛り込まれている。 こういうベタな設定大好き!! 変化球もいいけれど、これぞミステリの…

⑧ベーシックインカム 井上真偽

*ネタバレです。 作者の井上真偽と言えば、「その可能性はすでに考えた」で新たな世界を見せてくれた次世代ミステリの作家さん。 ベーシックインカムは、経済本のようなタイトルだが、テクノロジーの発達した未来を舞台にしたSFミステリ短編集。そのせいか…

⑦天使の殺人 辻真先

*ネタバレを含みます。 作者の辻真先さんは、「たかが殺人じゃないか」で2021年度このミス1位をとっている。なんと御年88歳だとか。恐れ入りながら著作を知らなかったので、調べてみたところ、別名義=牧薩次(辻真先のアナグラムだ!)で「完全恋愛…

⑥人間の顔は食べづらい 白井智之

*ネタバレを含みます。 食用クローン人間が売買される時代のSFミステリ。 新型コロナウイルスが流行り、家畜の感染により肉食をやめた人間たち。その結果、子どもの危機的な栄養不足という社会問題が起こり、その解決策として可決された法案が食人法である…

⑤Another 綾辻行人

*ネタバレを含みます。 Anotherを初めて読んだのは、ちょうど10年くらい前だ。 当時、漫画化・アニメ化と世間はAnotherフィーバーだったのを覚えている。館シリーズで新本格の入り口に立ったばかりのわたしは、Anotherこそが綾辻さ…

④ラグナロク洞 霧舎巧

*ネタバレを含みます。 お気に入りの<あかずの扉>研究会シリーズ3作目。 このシリーズは、鳴海さんと後動さんと2人の探偵が出てくるが、私は鳴海さん推しだ。 作中でカケルが「今の鳴海さんの推理は―(省略)―決して瑕疵のない唯一無二の回答というわけ…

③キングを探せ 法月綸太郎

*ネタバレを含みます。 タイトルが秀逸である。この作品はタイトル自体にトラップが仕掛けられているのだ。 最初に犯人視点で計画のあらましを描くことで、読者はある程度の真相をあらかじめ知ることになる。しかし、りさぴょんとカネゴンの対象(殺してほ…

②あいにくの雨で 麻耶雄嵩

*ネタバレを含みます。 解説で千街さんが書かれているように、麻耶雄嵩は破壊者だ。「翼ある闇」や「夏と冬の奏鳴曲」でこてんぱんにされた読者は分かると思う(笑) 千街さん曰く、ミステリというのは事件の解決とともに救済がもたらされ、非日常から日常に…

①ナイン・テイラーズ ドロシー・L・セイヤーズ

*ネタバレを含みます。 2021年の初読みはナイン・テイラーズ。 意図せず大晦日から読み始めたけれど、この作品を読むには、365日中一番ふさわしい日だった。 この作品の主人公である鐘については、説明があるものの縁がなさすぎて、仕組みや歴史などい…