ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

54 夜の声 ウィリアム・ホープ・ホジスン

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▶あらすじ

あのH・P・ラヴクラフトが多大な影響を受けた鬼才ホジスンは、異界への憧憬と恐怖を大海原に求めた。本書には、闇の海から聞こえる奇妙な声が、キノコに覆われたとある島の怪異を語る傑作「夜の声」をはじめ、死の海サルガッソーや海に浮かぶ石の船、さらにはカビに呑みこまれた廃船などにまつわる海洋奇譚全七編に、<カーナッキ>シリーズの先駆「水槽の恐怖」を収録した。

 

 

 

(個人的な)点数 8/10

 

 

 

バミューダ海域マリー・セレスト号の謎・・・大海原では説明のできない不思議なことがたくさん起こります。

本作は、海にまつわる怪異がつめこまれた怪奇短編集。船乗りだった作者の、海に対する畏怖の念が感じられる作品です。

 

表題作「夜の声」は、ただ怖いだけではなく、ストーリーテーリングが光る作品です。夜の海で、船乗りたちに語り掛けてくる奇妙な声。「声」が語るのは、ある男女が遭った世にも恐ろしい悲劇でした。

恐怖、憐憫、祈りと様々な感情が掻き立てられ、最後には虚しさが残ります。

 

「夜の声」とは対照的に、直接的な恐怖が描かれている作品も。未知の巨大生物が襲ってくる「熱帯の恐怖」や、カビに呑み込まれた船を描く「カビの船」は、大画面で見ているかのような迫力があり、非常にスリリングです。

 

本作はもともと、入手困難でしたが、今年復刊し簡単に手に入るようになりました。読めてよかったと思える作品です。