【湿地】アーナルデュル・インドリダンソン
*ネタバレを含みます
本作はアイスランドミステリである。
アイスランドでは、単純で杜撰で行き当たりばったりな犯罪が多いらしく、複雑に入り組んだ事件などは少ないらしい。そのため、その複雑さこそ醍醐味であるミステリという文化はあまり流行らなかったそうだ。
そんな中、アイスランドでミステリブームの火付け役となったのがこのエーレンデュル警部シリーズである。
多くの感想に「まさに湿地のような作品」とある通り、この本はじめじめして鬱々しており、非常に重たい。なにしろキーワードは強姦と遺伝子疾患である。
わたしがこの作品で唸ったのは、ミステリでよく挙げられる謎の1つ「なぜ殺人が起こったのが今なのか」に対しての答えが非常に納得のいくものだった点だ。
「なぜ殺人が起こったのが今なのか」という謎には「なぜ今となって殺したのか」という時期の問題と、「特殊な状況(クローズド状態など特定の人が疑われやすい場)でありながら、なぜ今殺したのか」という場所絡みの問題の2種類あるが、本作では前者としての謎が提示される。
強姦の被害者が老人を殺したのだとしたらなぜこんなに月日が経ってからなのか?この答えは遺伝子疾患であった。
救いようのない重たい展開だが、最後は非常にきれいに謎が収束していく良作ミステリ。
次は続編の【緑衣の女】と【声】も読んでみたい。
10月27日読了