㊲麦の海に沈む果実 恩田陸
▶あらすじ
三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後に日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪した生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えたいわくつきの本。理瀬が迷い込んだ「三月の国」の秘密とは?この世の「不思議」でいっぱいの物語。
(個人的な)点数:5/10
湿原に囲まれた孤立した学園で、生徒たちが一人、また一人と殺されていく。
ホグワーツを彷彿とさせる全寮制の学校、忍び寄る霊の影、生徒たちの間で渦巻く疑念と悪意―オカルティックな雰囲気を存分に楽しめる作品だ。
恩田陸さんの小説は、「夜のピクニック」「ドミノ」しか読んだことがなく、ホラーテイストの作品は初めて読んだのだが、恐怖を演出するのがうまいなあと思った。理瀬が図書館で追われるシーンや、舞台上に麗子が現れるシーンなど、絶妙に怖い。
しかし、雰囲気や散りばめられた謎自体は魅力的なものの、真相には納得がいかず。理瀬や麗子の心境がいまいち分からないまま幕が閉じたという感じ。明らかになっていない部分も多く残っており、しっくり来なかった。
また、理瀬をはじめ、生徒たちはみんな美少女・美少年という設定があまり好きではなかった。個人的に、不器量とまではいかなくても、いたって平凡なキャラクターが読者の予想を超えて活躍する小説が好きなので、なんだか出来すぎた世界をみているようで苦手だった。でも、中高生のころに読んでいたら、今よりきっと楽しめたと思う。