ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

㊾ししりばの家 澤村伊智

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▶あらすじ

おかしいのはこの家か、わたしかー夫の転勤に伴う東京生活に馴染めずにいた果歩は、幼馴染の平岩と再会する。家に招かれ、彼の妻や祖母と交流し癒される果歩だが、平岩邸はどこか変だった。さああという謎の音、部屋に散る砂。しかし平岩は、異常はないと断ずる。一方、平岩邸を監視する1人の男。彼は昔この家に関わったせいで、脳を砂が侵食する感覚に悩まされていた。そんなある日、比嘉琴子という女が彼の元を訪れ・・・?

 

 

(個人的な)点数 7/10

 

 

比嘉シリーズの4作目です。

 

今回は最強の霊媒師・琴子の物語。

彼女にとって、生き方を変えるきっかけになったししりばという化け物との因縁の対決が繰り広げられます。

 

本作には、琴子のほかに2人の主人公がいます。

1人目は、主婦として鬱屈した日々を送る果歩。13年ぶりに再会した幼馴染・平岩の家で、異様な光景を目にします。本作での恐怖の受け手です。

2人目は、琴子の同級生・哲也。小学生のころ、琴子と共に、幽霊屋敷でししりばに遭遇してしまったことで、普通の生活が送れなくなり引きこもりになってしまいます。

 

平岩邸の異様な光景、そこで平然と生活する一家の異常さ、隠されていたおぞましい秘密-「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」のようなねっとりした怖さはありませんが、サスペンス的な怖さがあります。

ししりばの正体や弱点をめぐる伏線回収も鮮やか。

また、今回はドラマ部分にも力がはいっており、哲也と琴子が前へ進むために、恐怖へ立ち向かうラストがアツかったです。

ホラーとドラマのバランスがよく、シリーズの中では一番好みでした。