㊻凶宅 三津田信三
▶あらすじ
山の中腹に建つ家に引っ越してきた、小学4年生の日比乃翔太。周りの家がどれも未完成でうち棄てられていることに厭な感覚を抱くと、暮らし始めて数日後、幼い妹が妙なことを口にする。この山に棲んでいるモノが、部屋に来たというのだ。それ以降、翔太は家の中で真っ黒な影を目撃するようになる。怪異から逃れるため、過去になにが起きたかを調べ始めた翔太は、前の住人の遺した忌まわしい日記を見つけ―。最凶の家ホラー。
(個人的な)点数 6/10
本作は、ホラーにしては珍しく、小学4年生の少年が主人公です。
そのわりには、容赦のない展開で、最後までヒリヒリしながら楽しむことができました。
曰く付きの家に越してきた小学生の翔太は、新居を一目見た時から、強い危機感を抱きます。越してきて間もないうちに、誰もいないはずのベランダに黒い人影が。
田舎が舞台の家系ホラーで、怪異だけでなく、よそよそしい村人たちや、言い伝えなど、おどろおどろしい雰囲気が出ています。
翔太は、家族を守るため、怪異の調査に乗り出します。前の住人の残した日記などから、怪異の全貌が徐々に明らかになっていき、ミステリとしても楽しめます。
夜になると妹の元を訪れる謎の人物(?)の正体についても、ギミックが効いていておもしろかったです。
また、翔太は近所に住む少年と仲良くなるのですが、彼らの友情がまたアツいのです。
2人は怪異を食い止めるため奔走しますが、怪異は容赦なく進行していき、何度も身の危険に晒されてしまいます。
本作は、相手が小学生だからといって手加減してくれるようなホラーではありません。どうか2人に最悪な結末が訪れないようにと祈りながら読んでしまいます。
田舎でのひと夏の冒険(?)という点では、スタンドバイミーを彷彿とさせるエモさがありました。