㊹七人の証人 西村京太郎
▶あらすじ
十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気づいたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。次々建物から現れる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。犯人の狙いは何なのか。意欲充満の会心サスペンス長編。
(個人的な)点数 8/10
西村京太郎=トラベルミステリーだと思って敬遠している方は、ぜひ本作を読んでいただきたい!
実は、電車や時刻表が出てこないミステリも書いているんです。
雪山で起こるクローズドサークル殺人を書いた本格ミステリ「殺しの双曲線」は有名ですが、私は本作のほうがおもしろかった!
プロットは、昭和58年に書かれたとは思えないほど尖りに尖っています。
ある殺人事件の犯人として、無実を訴えながら獄死した青年の父親が、七人の目撃者たちを無人島に拉致してきます。島には事件現場となった町の一角が再現されており、そこでそれぞれの証言を再検証していくことに。
いくら父親が金持ち設定だとしても、島上に街並みを再現させるなんて、正直ぶっ飛び過ぎていて現実味はありません。(もはやSFミステリの域)
しかし、完璧と思われた目撃者たちの証言が、小さな小さな矛盾点を突かれ、崩されていく過程がほんとうに見事。読み進めていくごとに事件の様相が、くるくると様変わりしていきます。
また、再検証中に目撃者の一人が何者かに襲われ、リアルタイムでも殺人事件が発生します。
過去の殺人と現在の殺人はどのように繋がっているのか?
堅実な推理が光る傑作ミステリ。もっと知名度が上がってほしい作品です。