ミステリ亭 tama

当亭では、主にミステリ小説を蒐集しています。電話線が切断され、橋も落とされたようですので、お越しいただいた方はご自身で身をお守りください。

㊹七人の証人 西村京太郎

f:id:tamasan7:20210814195912j:plain

 

 


▶あらすじ

十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気づいたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。次々建物から現れる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。犯人の狙いは何なのか。意欲充満の会心サスペンス長編。

 

 

 

(個人的な)点数 8/10

 

 

 

西村京太郎=トラベルミステリーだと思って敬遠している方は、ぜひ本作を読んでいただきたい!

実は、電車や時刻表が出てこないミステリも書いているんです。

雪山で起こるクローズドサークル殺人を書いた本格ミステリ「殺しの双曲線」は有名ですが、私は本作のほうがおもしろかった!

 

プロットは、昭和58年に書かれたとは思えないほど尖りに尖っています。

ある殺人事件の犯人として、無実を訴えながら獄死した青年の父親が、七人の目撃者たちを無人島に拉致してきます。島には事件現場となった町の一角が再現されており、そこでそれぞれの証言を再検証していくことに。

いくら父親が金持ち設定だとしても、島上に街並みを再現させるなんて、正直ぶっ飛び過ぎていて現実味はありません。(もはやSFミステリの域)

 

しかし、完璧と思われた目撃者たちの証言が、小さな小さな矛盾点を突かれ、崩されていく過程がほんとうに見事。読み進めていくごとに事件の様相が、くるくると様変わりしていきます。

 

また、再検証中に目撃者の一人が何者かに襲われ、リアルタイムでも殺人事件が発生します。

過去の殺人と現在の殺人はどのように繋がっているのか?

堅実な推理が光る傑作ミステリ。もっと知名度が上がってほしい作品です。

 

 

㊸予言の島 澤村伊智

f:id:tamasan7:20210813204336j:plain

 

 

▶あらすじ

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後<霊魂六つが冥府へ落つる>」という。天宮淳は幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは悲劇の序章に過ぎなった・・・。全ての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。傑作ホラーミステリ!

 

 

(個人的な)点数 6/10

 

 

帯に書かれた初読はミステリ、二度目はホラーという言葉に惹かれて購入。

初読はホラー、二度目はミステリは読んだことがありますが、その逆ははじめて。わくわくしながら読み始めましたが、二度目はホラーホラーは、あくまで広義のホラーであり、思っていた感じとは違いました。

 

しかし、誇張気味のキャッチコピーを除けば、ホラーミステリとして十分楽しめました。怪異の真相は見事でしたし、ヒキタの怨霊が生まれた理由も、読者に対する皮肉が効いていて中々おもしろかったです。

 

澤村ホラーは、京極夏彦京極堂シリーズや、三津田信三の刀城言耶シリーズと同じ民俗学ホラーに位置しますが、それだけではなく、怪異を通して社会問題を取り上げるところに特徴があります。

本作のテーマは「言葉の呪い」。登場人物たちは、それぞれの呪いに囚われています。親の言葉や、上司の言葉、予言者の言葉・・・歪んだ言葉の呪いは、殺人事件をも引き起こしてしまうのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

㊷魔界転生 山田風太郎

f:id:tamasan7:20210731170911j:plain

 

 

 

▶あらすじ

島原の乱に敗れ、幕府への復讐を誓う天草川の軍師、森宗意軒は死者再生の秘術「魔界転生」を編み出した。それは、人生に強い不満を抱く比類なき生命力の持ち主を、魂だけ魔物として現世に再誕させる超忍法だった。次々と魔界から甦る最強の武芸者軍団。魔人たちを配下に得た森宗意軒は紀伊大納言頼宣をも引き込み、ついに柳生十兵衛へと魔の手を伸ばす・・・。群を抜く着想と圧倒的スケールで繰り広げられる忍法帖の最高傑作!

 

 

(個人的な)点数 8/10

 

 

天草四郎、荒木又右衛門、宮本武蔵・・・歴史に名を轟かせた7人の男たちが蘇る!

十兵衛3部作の2作目にあたる本作。前作では、終始余裕のみられた十兵衛も、今回はかなり苦戦します。何しろ、父である柳生但馬守が敵になってしまうのだから・・・

1作目の柳生忍法帖での十兵衛の立ち位置は、家族を殺された女たちの復讐の手助けするいわばオブザーバー的なものでしたが、今回は彼自身が物語の中心。前作では触れられなかった彼の内面的な部分-父に対する苦悩と葛藤がクローズアップされています。

 

 

★本作の魅力★

①一瞬の対決シーン

バトル漫画だと、バトルシーンに尺を使いますよね。

しかし、本作の対決シーンは一瞬なんです。山田風太郎のすごいところは、一瞬の死闘を描くところ。その数秒に、血も汗も殺気もすべてが詰まっている。

また数行にも関わらず臨場感があるのは、カメラがあちこちに配置されているかのような、あらゆる角度からの描写ゆえ。

特に本作では、ラスボス・宮本武蔵との対決シーンが素晴らしかったです。午後4時、伊勢に浮かぶ島で向かい合う2人。燃える夕陽、西日を反射する海、白い砂浜に落ちる2人の影。

意識せずともそのシーンが頭に浮かび、知らず知らずのうちに息を止め読んでいる。作者の筆力に圧倒されます。

 

 

②脇役の使い方

1作目の柳生忍法帖では、女たちを守るため、恐ろしい敵相手に思わぬ奮闘をみせた坊様たちの姿に涙した読者も多いはず。

今回、脇役として物語をさらにアツくさせてくれたのは柳生十人衆。十兵衛のことを師と仰ぎ、自ら柳生十人衆と名乗る、どこかのんきで憎めない男たち。時にはムードメーカーとして場を和ませ、時には突拍子もない方法で十兵衛のピンチを救う。愛すべき彼らのそれぞれの死に様に、またも胸が熱くなります。

 

 

③印象的なラスト

これは本作だけでなく、風太郎作品の多くに言えること。少なくともこれまで読んできた「明治断頭台」「幻燈辻馬車」「甲賀忍法帖」「柳生忍法帖では、ラストシーンが真っ先に浮かぶくらい、強烈な印象を残しています。

爽やかで清々しいのに、胸のどこかで木枯らしが吹く。強いて例をあげるなら、卒業式でのあの感情でしょうか。新しいステージへと進む新たな期待、その一方で、二度と手に入らないものを失ってしまったかのような、喪失感。

風太郎作品は、基本的に勧善懲悪で、全体的に陽な雰囲気が流れていますが、物語の幕引きはいつもどこか切ないのです。

 

 

 

 

 

㊶などらきの首 澤村伊智

f:id:tamasan7:20210717211625j:plain

 

 


▶あらすじ

「などらきさんに首取られんぞ」祖父母の住む地域に伝わるなどらきという化け物。刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。しかし不可能な状態で、首は忽然と消えた。僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが・・・。野崎はじめての事件を描いた表題作に加え、真琴と野崎の出会いや琴子の学生時代などファン必見のエピソード満載、比嘉姉妹シリーズ初の短編集!

 

 

 

個人的な点数 7/10

 

 

「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」に続く比嘉姉妹シリーズ3作目ですが、シリーズを読んでいない人でも楽しめるホラー短編集だと思います。

どの話も、最後の最後まで油断できません。穏やかな結末に続く道のすぐ脇に、深い沼が広がっているような感じ。いつ道をそれるか分からない危うさがあり、読み終わるまで気をぬけないのです。

澤村さんには珍しく「いい話やん」で終わる話もあれば、突然爆弾が落とされる話も。

私は民俗学系ホラーが大好きなので、表題作が一番おもしろかったです。祀られていたなどらき様の首が突然消えた―ホラーなのか?ミステリなのか?どちらで着地するのか最後までハラハラできます。

 

 

 

㊵沈黙 遠藤周作

f:id:tamasan7:20210711133403j:plain

 

 

 


▶あらすじ

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制のあくまで厳しい日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる・・・。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、<神の沈黙>という永遠の主題に切実な問いを投げかける書下ろし長編。

 

 

 (個人的な)点数 6/10

 

 

あなたのために、多くの信徒たちが虐殺された。それなのに、なぜあなたは黙っているのか―。

キリシタン狩りが行われている日本で、司祭のロドリゴは何度も神に問いかけます。

本作は、カトリック教徒である作者によって書かれた、「神の沈黙」という禁忌的な主題を取り上げた作品です。

 

私はキリスト教徒ではないし、世界で最も信徒の多いこの宗教について、浅はかな知識しかありません。なので、信仰とは何なのか、最後まで真に理解することはできませんでした。ただ、背教について考えるところがあったので書いてみます。

 

当時、踏み絵や拷問で、多くの日本人キリシタンが背教させられました。

授業で踏み絵という方法を学んだ時、「こんなぬるいやり方で信徒を発見できるの?」と私は拍子抜けしました。イエスの顔を踏むのは辛いかもしれませんが、自分や家族の命がかかっているのです。信仰は捨てず、形だけ踏めばいい。簡単なことです。しかし、その簡単なことができずに殺された信徒たちが数多くいたことに衝撃を受けました。

 

 本作でも、踏み絵を拒んだ信徒たちが拷問にかけられ、殺されていきます。彼らやロドリゴの対照的な存在として、キチジローという男が登場します。彼は、信徒でありながら、拷問にかけられそうになるたびに、転びを繰り返してきました。そしてついには、自分の命を守るために、ロドリゴを役人へと引き渡し、本作におけるユダとなるのです。

 

彼は、自分が裏切ったロドリゴに対し、許しを乞います。自分は生まれつき心が弱い。弱い者は殉教さえできない。どうして自分はこんな世の中に生まれてしまったのだろうかと。

殉教者たちが英雄視されるのに対し、キチジローのような者は転びキリシタンと呼ばれ、神を裏切った背教者として信徒たちから蔑まれてきました。

 

果たして、信仰とは、自分の命にかえても、守らねばならぬものなのでしょうか。そして、守り切れなかった者は、パライソ(天国)へいく権利がないのでしょうか。もしそうなのだとしたら、信仰とは何と排他的なものなのでしょうか。

 

しかし、最後にロドリゴがたどり着いた答えに、私は救いを感じることができました。

「強い者も弱い者もいないのだ。強い者より弱い者が苦しまなかったと誰が断言できよう」

殉教者たちが苦しんだように、転んだ信徒たちも、自分の行為に苦しんだはずです。キチジローは、自分の弱さと、信仰に求められる強さとの間で苦しみ続けていました。

背教というのは、決して周りが決めるものではない。例えイエスの顔を踏もうとも、その足が痛むのであれば、その者から信仰が失われることはないのです。

 

 

 

 

㊴宿で死ぬ 旅泊ホラー傑作選 

f:id:tamasan7:20210704130342j:plain

 

 


▶あらすじ

ひっそりと佇む老舗の旅館や、どこか懐かしいグランド・ホテルー。非日常に飛び込む旅の疲れを癒し、心やすらぐべき「宿」を舞台としたホラー作品は今も昔も人の心を惹きつけ続ける。その空間に満ちているのは、恐ろしさ、不気味さ、残酷さ、美しさ、そして・・・?「逃亡不可能」な短編を一挙集結!珠玉の傑作アンソロジー

 

 

(個人的な)点数7/10

 

 

旅館やホテルが舞台のミステリやホラーが大好きなので、これはたまらんかったです。

旅泊ホラーが全11編収録されているのですが、バリエーションが豊かなので飽きません。

曰く付きの部屋に泊まって怪現象に遭ったり、ホテルそのものが邪悪な意思を持っていたり、宿泊客の中に異形のものが紛れ込んでいたり・・・。

旅館かホテル客目線か従業員目線、一口に旅泊ホラーと言えども、どこにスポットを当てるかで、印象も全然違うのです。

 

本作は全体的に、どこか懐かしいクラシカルな話が多く、眠れなくなるような怖い話はありません。しかし、「傑作選」と銘打っているだけあって、怖くはないものの、1つ1つの話に存在感があります。

 

その中から特に印象的だった3作を紹介します◎

 

 

「封印された旧館」 小池荘彦

ホテルスタッフたちが肝試しに行ったのは閉鎖されたホテルの旧館。その日から身の回りで怪現象が起こりはじめ、身近な人間が次々に死んでいく・・・。

よくある話ですが、強いて言うなら私はこの話が一番怖かったです。

ホラーにおいて「ここが怖い!」というポイントは人それぞれですが、私は実害のある霊が出てくるものと、辻褄の合わない現象が起こるホラーが苦手です。

 

①については誰だってそうですよね(笑)実害のない霊なんて、今時神話レベルかもしれない。

 

②は、説明するのが難しいんですが、ありえない現象よりも、辻褄の合わない現象のほうがずっと怖いんじゃないかって思うのです。

例えば高層ビルの窓がノックされるっていうのあるじゃないですか。これはもう100パーセント「ありえない」ことですよね。だからもちろん怖いんだけど、ありえなければありえないほど日常と切り離されていく。ポルターガイスト系のホラー映画が全然怖くないのも、「ありえない」が行き過ぎて、現実味を感じられないからかもしれません。

では、お母さんが「おやつよ~」とやってきて、お母さんの背丈からは考えられないくらい高い場所からノックが聞こえたらどうですか?お母さんのはずがないんだけれど、100パーセントありえないともいえない。この辻褄の合わない現象は、もはや高層ビルの窓を叩かれるよりも異常性を感じます。

 

長々と語りましたが、「封印された旧館」は全編の中で唯一①と②の基準を満たしていたので、怖い大賞に選びました。

 

 

 

「屍の宿」 福澤徹三

ある不倫中の男女が廃れた温泉宿を訪れる。部屋の天井には赤黒いしみが広がっており、掛け軸の裏からはお札が。曰くありげな旅館で起こる怪異とは・・・

古典的なお宿ホラーかと思いきや、「うわあ」と唸るオチでした。最後にがらりと印象が変わるところや、じゃらんネットで☆1をつけられそうなお宿の描写が好きでした。個人的には一番好みの話です。

 

 

 

「深夜の食欲」 恩田陸

ホテルボーイが、スイートルームへ夜食を届けにいくのだが、ワゴンの様子がおかしくて・・・?

インパクト大の異色ホラーです。真夜中に注文のはいった4人前のローストビーフを食堂から客室へ届けるまでのお話で、深夜のホテルの廊下が舞台。

何もないはずの廊下で、おんぼろワゴンの「ヘイスティングス」がはね上げたのは人間の爪で・・・。霊は一切でないのに、想像力を掻き立てられる怖さがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

㊳悪魔と警視庁 E・C・R・ロラック

f:id:tamasan7:20210627111351j:plain

 

 

 


▶あらすじ

濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰丁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと「ファウストの劫罰」の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。

 

(個人的な)点数 5/10

 

ミステリ界には個性の強い探偵や刑事がたくさんいます。

みなさんの推しはだれですか?

私は基本的に、探偵よりもワトソンを好きになりがちなんですが、探偵であれば、学生アリスシリーズの江神さん、京極堂シリーズの榎木津さん、開かずの扉シリーズの鳴海さんあたりが好きです。

彼らに対する「好き」は、公言できる「好き」=みんなと共有したい「好き」であり、つまりファンとしての「好き」です。

一方で、誰にも言わずに密かに楽しみたい「好き」もありますよね。それが私の場合、島田荘司の吉敷竹史刑事と、ロラックのマクドナルド首席警部なんです・・・!

 

 

 

マクドナルド首席警部について

まるでマクドナルドシリーズをすべて読んでいるかのような発言をしましたが、実は本作をいれてたった2作しか読んでいません。めちゃくちゃ新規で、自分でもびっくりです。

しかし、逆に言えば、最初に読んだジョン・ブラウンの死体」がそれほど良かったということ。この1作で完全に心を掴まれてしまったということなのです。

 

ジョン・ブラウンの死体」を読んだとき、紳士的な態度や滲み出る余裕、田舎との親和性の高さから、彼を60代のベテラン警部だと思っていたのですが、なんとまだ40代だった!

 

背が高くて痩せぎす、姿勢がよくスポーツ選手のような体格。寡黙で冷静、忍耐強く、論理的で客観的に物事を捉えられる。絵画や音楽にも造詣深く、知識が豊富で頭もよい。

 

絵に描いたようなインテリです。そもそも、ロラックの生み出したこの警部は、インテリ警察官の祖なのだとか。それまでインテリとは程遠い立場として描かれていた警察官を、主役の座に就かせるきっかけとなったシリーズなんだそうです。

 

しかし、彼の魅力はそこではありません。「ジョン・ブラウンの死体」では、危機に陥った友人を救うため、手段を選ばない行動をとるなど、スマートさとはかけ離れたアツい一面が。インテリでありながら、人情派なところが魅力なのです。

 

本作で、マクドナルドが、部下に対してあるクイズをだします。

【ある路上生活者が時間をかけて煙草の吸殻を拾い集め、新しい紙で巻いて立派な煙草を作っている。新しい煙草を一本作るには、平均して七本の吸殻が必要になる。ある朝、四十九本もの吸殻を見つけた彼はその吸い殻から何本の煙草を作ったか?】

論理的に考えれば、答えは七本です。

しかし、彼は路上生活者の立場に立って考えなければ、本当の答えは出ないと言います。

「きみは吸殻を七本ひろった。煙草を吸うのは、四十九本ひろうまでおあずけにするか?そんなことはしやしない。七本集まった時点で、その日の最初の一服としゃれこむさ。こうすると、吸い終わったときには吸殻が一本出来るし、それもちゃんととっておく。こうやって四十九本の吸殻から煙草を作ると、最後には吸殻が七本残る。だから正解は八本なんだ。刑事の仕事はこのクイズを解くのに似ている」

論理は絶対的ですが、それだけでは事件を解くことは出来ないんですね。

 

 

 

本作について

濃霧に包まれたロンドン、仮面舞踏会、メフィストフェレスの装飾が施された死体―妖しい雰囲気のなか、事件は始まります。

自分の車の後部座席に死体が遺棄されていたことから、マクドナルドは事件に乗り出すことに。関係者への聞き込みから糸口を探していくのですが、淡々と進んでいくため、盛り上がりに欠け、退屈に感じてしまいました・・・。犯人の計画も、かなり杜撰。

しかし、聞き込みを進めるにつれ、事件の印象が様変わりしていくのはおもしろかったです。